5月の風/吉岡ペペロ
 
東京の5月の風は強かった

若い緑の擦れた香りが

スーツや髪をなぶっていた


きょうぼくは電卓をたたいた

ぼくのまえには父母がいて

父母のまえには祖父母がいて

そうやって2を掛けてゆくと

ぼくの二十代まえには

104万8576人の男と女がいた

なぜだろう

それだけでぼくは優しくなれたんだ


東京の5月の風は強かった

若い緑の擦れた香りが

スーツや髪をなぶっていた







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