葉陰のひと/恋月 ぴの
もうちょっとを掬い集めても
もうちょっとはもうちょっとのまま
それでも息なんかふぅっと吹き付けたら
袖口でゴシゴシ磨いてみたけど
やっぱし、もうちょっとはもうちょっとのままだった
※
あの頃のわたしってね
吃音混じりな恥かしがり屋さんで
いつも好きなひとの顔色を伺うばかりで
告白できないもどかしさに俯いて歩いていたのに
ちいさな石ころにけ躓いては笑われた
※
もうちょっとはもうちょっとのまま
それはそれで良いのだと思うけど
思いのたけを伝えられたら、さぞすっきりするんだろうね
果して、どっちが自分らしいのだろう
なんて言い訳に思えてしまうけど
※
今だってたいして変わらないのかも
もうちょっとにしがみついていたりして
あの頃のわたしと一緒だね
いつまでも告白できず俯いて歩いているなんてと
丸まった自分の背中を押してみた
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