さくらんぼ/葛西曹達
狭いベッドで二人
さくらんぼみたいになって
朝が来るのを待っていた
外は花散らす雨
目覚まし時計の針の音
グロー球の淡いオレンジ
微かに残る朝のシャンプー
数奇な運命でも何でもない
ただの成り行きに
愛着が涌いているだけ
歳月を重ねるごとに
重くなってゆく体
甘い実をかじるように
軽い気持ちで操る心
このまま手をつないで
時が止まったとして
熱を感じなくなってしまえば
生きていないのと同じで
一分一秒を
こんなにもいとおしく感じるのは
今が最初で最後だろう
きっと二度と無いのだろう
朝を待っていた
過ぎ行く時間に抗うことなく
甘酸っぱさを噛み締めながら
二人で待っていた
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