海への道/ふるる
 
海への道を進む

枯れ枝の軌跡を追う
その感動的なフレーズが生まれたのは偶然

はるかと名づけられた子供が
遠くを見ている
一生その名に囚われ続ける
その名から出ることはできない

詩集や詩誌の並んだ本棚に
誰も目を向けない
聖域に草木が茂り
雨も降る
知られずに

詩人を気取る兄の言葉は
いかんせん論理的
マンデリシュタームの墓に
ひざまづきたいと
靴を買いに行く

存在の(ナナカマド)ことについて
兄は語っていたけれど
わたしには理(シラカシ)解できない

兄の履いていた古い靴に
白い木の芽が生えて
明日は六月一日

今日は五月四日
眼前に広がる海を眺めながら
自分の子の名は鋭く尖ったものがいい
はるかがつぶやく





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