悲恋/ただのみきや
北国に桜が咲いて幾日も経たず
昨日突風が吹いて花びらを散らして行った
今朝 桜は冷たい雨に濡れそぼち
うつむき滴る 運命を受け入れつつも
儚げな美しさを愛でる者が
その色香に誘われて手を伸ばす
花は看取る者へ最後まで微笑み続け
冷たく濡れたその身を委ねる
いつになく寡黙な鳥たちが
雨の囁きに聞き入っている
目を瞑ると波紋のような静けさが広がり
微かに 吐息が聞こえたような
突然 引き裂くように鳥が鳴き
何かがこと切れたことを告げた
散ることもなく冷たくなった花は
涙のような雫を滴らせた
艶やかな姿のままであることが
いっそう悲しかった
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