瞳に映る記憶/長押 新
彼らは死に慣れてしまった。だが
校庭で炊いた焚火に身体を当て、燃え上がる
湿った潮風が鼻を擽る中で心が揺れた時、死そのものが、
何故生きているのか問い掛けてくる。彼らは死に祈りを捧げた、
そして恐れから既に冷え切った死を焚火で温め、
服を乾かしてやった、たえず
髪を梳くように優しい手つきで。一人が涙を流し
子供たちが寒いと震える。
彼らはすべてを置き去りにした。もう一人の女も
優しい手つきをしていた、円を描くように
死は大きな水たまりを作り上げた、何もかも吸いつくし
ぞっとするような色をして、乾きたがっているのが
そこに居た誰にでも一目でわかった。
そして彼ら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)