身体がどうして花に触れられよう。花に触れられるのは、たましいばかりだ。/リンネ
 
ろまで来た。
男のまぶたは多摩川を閉じた。

「君はつり橋の中に急に現れた林に潜れるかい?」
「つり橋なんて、どこにもありません」
「ないって、君は確かにそこで生まれたんだ」
「余りにも生まれすぎたわ、私をつなぎとめるのはあなたの視線」
「他人に見つめられて、それっきり固まっていたいのかい?」
「ナイフとフォークを頂戴。それで光を食べ続けられる」
「ごまかさないでくれよ。こうしている間に、ぼくは渇いてしまう」
「やめて、あなたは病気。自然に通り過ぎるのを待つのよ!」

光が人間に光らない。
雨におたまじゃくしが流れない。
八月の道が七月の道をくぐって。
何も主張しない看板が積もり。
子供の宿らない妊婦が閉じられる。
ほら比喩ばかりがそれらしく述べられて。

「きみは歌になった世界を見たことがある?」
「やめて、あなたは病気。自然に通り過ぎるのを待つのよ!」








*タイトルはタゴールの詩文より引用
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