signifiant/紅月
 
それから、
と いつも
はじまりは
それから、
おだやかに
火葬された赤子の
骨は小指の
爪ほど小さな
鈍い星の
欠片みたいだった
みたいだった
という
あえかなる比喩が
途絶えたはずの
シナプスの
零落のひとつひとつをなぞるように
曖昧な
詩情で埋めて
不明は、やさしい
どこまでも、やさしい

反芻するうち
叩きつけられた、
硬いアスファルトのうえに


酩酊する
音叉


風がなびいている
青い
地雷原の静けさと
そこに立つ素足を
すずしい水が抜ける
油絵のように
浮きあがる緑と
禿げた皮膚のように
散点する土色、
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