側室と菖蒲/朝焼彩茜色
 
  切れ長の目
  切れ長の唇
  くっきり彫られた鎖骨

渋味 紫色の打ち掛け模様は 男華の菖蒲

 側室に成り上がった時
 生きるのをやめた

政治の星の字も心得ぬ 丸みの弱い女々しい正室

貴様さえ命を宿せば アタシに用はなかった

  切れ長の切れた目
  切れ長の切れた唇
  くっきり彫られた鎖骨に 涙が溜まる

 側室に成り上がった時
 生きるのをやめた

アタシはもうすぐ下劣な男にぐちゃぐちゃにされる

見送った 父上様母上様

アタシは菖蒲になりたい

 アタシの一人称は分裂し 暗闇から生まれ暗闇に帰る影が 何十にも圧し掛かり

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