お賽銭/たにい
早朝目が覚めて近くの神社に行く
冷たいシャワーで身を清め糊の効いた白いシャツに袖を通す
正月に参拝して以来だ
福守りが効いているのか今年は良い事続きだからお礼参りせねば
早朝の参道は人影は疎らだが深い緑が元気の元を発散している
大鳥居の前を過ぎようやく本宮に着いた
手を合わせ
いつも見守って下さりありがとうございますと心に呟いた途端 天の一画が開いて巨大な眼が微笑んだ
あの高さから見下ろしたら人間なんて蟻みたいなものだろう
その蟻達があれは良い事だとかこれは悪い事だと議論している
いいよ なんでも許すよ お前たちは可愛いよと眼が笑っている
つい甘えてお賽銭箱に十円玉を一枚だけ放りこんで帰った
戻る 編 削 Point(5)