飛んでいた/小原あき
 
風は飛んでいた
どこまでも飛んでいけた
そんな自分が誇らしかった


風は飛んでいた
飛ぶことしかできなかった
その運命に涙を流して
嵐を作った


風は飛んでいた
嵐を作るのにも疲れて
弱々しく飛んでいた


たんぽぽの綿毛は飛んでいた
風に抱かれて飛んでいた


やがてひとつが落ち着いて
ひっそり芽を出した


風は飛んでいた
たんぽぽに気付かぬまま
そよそよと飛んでいた









戻る   Point(6)