三月の街のためのオード/佐々木青
 
強くゆきすぎるものがある
  揺れる信号機
 交差点を走るのは
   車ばかりじゃなく
あまりの
 (不可視の)
 存在感に
  帽子をおさえる
    目をつむる
   スカートをぎゅっと
         つかんで
      小さな子どもを抱きしめる
  老紳士がそっとささやく
   「春がちかづいているんだよ」
   横断歩道に
   「ここはどこのほそみちじゃ」
     語りかける
        おばあさん
  人々はその白と黒を
       たよりにして
     街を
      ゆきすぎる
         どこまでも
     
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