三月の街のためのオード/
佐々木青
強くゆきすぎるものがある
揺れる信号機
交差点を走るのは
車ばかりじゃなく
あまりの
(不可視の)
存在感に
帽子をおさえる
目をつむる
スカートをぎゅっと
つかんで
小さな子どもを抱きしめる
老紳士がそっとささやく
「春がちかづいているんだよ」
横断歩道に
「ここはどこのほそみちじゃ」
語りかける
おばあさん
人々はその白と黒を
たよりにして
街を
ゆきすぎる
どこまでも
[
次のページ
]
戻る
編
削
Point
(5)