I can speak/本木はじめ
巨大な象に踏まれた早朝のグラウンドで
石灰で描かれた白いラインを挟んで
きみとぼく こんなに遠い
舞い上がる砂埃につつまれて
ほどけてゆく朝陽が
冷酷なやわらかさで広がってゆく
ここにきみがいて
そこにぼくがいたなら
だけどいつもいなくなるのはぼくらとゆう現象に過ぎない
飽きるほど登下校を繰り返した通学路も
知らないひとのように冷たい
花壇にふたりで埋めたチューリップを
握りつぶすように
重たい雲が停滞したまま
動かないのは人生ではなく
ぼくらだろう
きみはひとことも話さずに
ただ口元に人差し指をあてる
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