おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
ダメだわ。素質ない。二度と来ないで」
「おい、待てよ」
「さっさと行けって。いろいろ呼びますよ。そういうの慣れてるんで」
乗りもの酔いになりやすいわたしには、新幹線の席は窓際がいい。とりわけ上り列車のときは右側であれば見送りに来てくれた人が見やすくてなおいい。お父さん、お母さん、妹、がならんで手を振ってくれている。乗車の直前、お別れの挨拶のときにお父さんは、
「この厳しい時代によく、東京に就職を決められたな。おまえの気持ちが本物だってわかったよ。弥生、がんばれよ。お父さんは成功を願っているよ」
と言ってくれた。お母さんは、
「どんなことがあっても、みんな弥生の味方だよ。つらくな
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