おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 

喜悦の声。
 やがてミスブランチが乾ききった頃合いに彼は立ち上がりシャツを着て、左脇腹のあたりをまくり上げる。寂しそうに微笑む。そう、素肌に、なんだ。声に出さずにそう言う。シャツに穴は開いていなかった。わたしはそこへナイフを突き立てる。
「さようなら」
「うん、さようなら」
 彼は倒れる。大好きな極楽町に倒れる。
 わたしはそんなに好きじゃないので立ち上がる。
 笑おう。いつまでもにこやかでいよう、と決める。

「なんだった?」
「実家からの仕送りですね。カップ麺とかいろいろ」
「お、食べたい」
「あ、帰ってもらえます?」
「は?」
「やってみてわかったけどあなたダメ
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