DEAR./バンブーブンバ
 
 ひしめきあう一日のあとに
 コップを倒した夜は零れる
 子猫の駆けた路地裏に
 白い平らな月は滑る


 風は
 影の上に重なる雪をおくり
 この街の色やかたちをおくり
 世界はひとつの大きな布団になる 


 僕の親愛なる友人たちよ
 布団のなかで
 大きいお腹の課長代理が夢を見る
 エステに通う受付嬢が夢を見る
 縁無し眼鏡の新入社員が夢を見る
 日々の仕事につい果てた僕の耳に
 友人たちの苦しげな寝言はもぐり込む
 そうしておざなり途切れたあとの
 他愛もないしじまにおもう


 今宵なら、世界はどこまでも美しい


 吐息さえも棉になって
 スローモーションに消えてゆく
 非通知の点滅に導かれて
 夜勤のノートを丸めながら
 白粉の手摺をたたいてく


 風は
 影の上に重なる雪をおくり
 この街の色やかたちをおくり
 世界はひとつの大きな布団になる 




 DEAR.





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