うつろぎのひと/恋月 ぴの
君にとっての世界
それはこの部屋のなかがすべて
出かけてくるよ
君は寂しげに小首をかしげ
ドアをあける気配に
まだかなまだかなと待ちきれない様子で玄関を覗き込む
※
外の世界も見せてあげたいと思う
君はどう考えているのかな
キャットタワーのてっぺんからでもお見通しさ
そう言いだけに窓の外を眺め
ふと背伸びをしたと思ったらテーブルの下にもぐりこむ
※
醜いものにも美しさみぃつけた
そして君は、ゆったりと丸くなって夢のなか
笑顔でいること
平穏に暮らせること
とっても大切なはずなのに誰もが捨て去ろうとしているよね
※
お腹へったのかな
にゃあと鳴いて私を見上げる
前世じゃ君はきっと船乗りだったんだと思う
そしてかりかり可愛い音を立て
あてどない船出前のひと仕事お皿いっぱい平らげた
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