うつろぎのひと/恋月 ぴの
 
君にとっての世界

それはこの部屋のなかがすべて

出かけてくるよ

君は寂しげに小首をかしげ

ドアをあける気配に

まだかなまだかなと待ちきれない様子で玄関を覗き込む




外の世界も見せてあげたいと思う

君はどう考えているのかな

キャットタワーのてっぺんからでもお見通しさ

そう言いだけに窓の外を眺め

ふと背伸びをしたと思ったらテーブルの下にもぐりこむ




醜いものにも美しさみぃつけた

そして君は、ゆったりと丸くなって夢のなか

笑顔でいること
平穏に暮らせること

とっても大切なはずなのに誰もが捨て去ろうとしているよね




お腹へったのかな

にゃあと鳴いて私を見上げる

前世じゃ君はきっと船乗りだったんだと思う

そしてかりかり可愛い音を立て
あてどない船出前のひと仕事お皿いっぱい平らげた







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