詩は青春の文学である/天野茂典
 
   泡沫のように
   一瞬にして
   消えていった
   ファイル
   失ったものの
   奇妙な果実
   長い文字列だった
   戻ってくれ
   戻ってくれ
   もう2度と書けないのだから
   どこへ消えてしまったんだ
   うかつだった
   うかつを2度もやってしまった
   甘い痛みだ
   パソコン初心者のぼくには
   もうまったくわからない
   空まで飛んで壊れて消えた
   シャボン玉だったのか
   つり落とした魚は大きい
   また書こう
   また書こう
   今度は消えた分よりもっとよく
   めりはりのよくきいた
   佳作に挑もう
   関根 弘は言った
   詩は青春の文学である と
   ぼくはうかつだった
   ぼくは言おう
   詩は青春の行為である と
   ぼくの詩は
   消えたファイルはまさに62歳の
   青春の行為だったのだ



           2004・12・05
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