墓の名/マチムラ
 
僕らは見知らぬ未来を味方につけるため
騙し騙しの今日をやり過ごし
昨日の名前を付けるために墓を立てては
名前を付けると昨日が色あせ遠くなってしまいそうで
やっぱり何も刻まないこともある
無言の墓地には花もなく
その中で僕はうずくまり
なぜか大儀な重い腰があがらずに
温い湯に浸かったまま迎えた朝のよう
そんな日々のつれづれに
わけもなく意味を欲しがってみたりして
時々すっくりと立ち上がり
予定調和のなぐさめの様な青空を仰いでみる
でも実は知っている
意味は名付けた墓標を苗床にしか芽吹かないことを
だから墓標を眺める
だからこわばった指で不器用になぞる
与えてみたい墓の名を
呼んでみたい昨日の意味を



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