時代の日陰の奇妙な花/ただのみきや
ひねくれて咲いた花は
つまらない冗談を浴び
触れない風潮にそよぎ
良く肥えた嘘に根を張った
罌粟より見開いて
月よりもあぶなくて
桃よりも貪欲で
嘘のようにやわらかい
死のように甘いもの
「わたしは誰?
誰も名前を呼んでくれないの」
天から冴え冴えとした孤独が突き刺さる夜
白い吐息がしゃれこうべのように寄り添う
忘れたくないことが地下鉄の階段を下りて行く
忘れたいことばかりが悪友のよう迎えに来る
蠅のように当たり前で
リボルバーのようにとぼけていて
街のようにザラザラして
影のようにおしゃべりで
真昼のようにすべてを脱がすもの
「わたし 悪くないでしょう?
ねえ わたしに新しい名前をつけてよ」
何度も引きちぎられた花は
たくさんの顔を付けている
流動する価値観の上澄みに根を這わせ
具現化する 真夜中の白い裂け目
「……わたしは 誰? 」
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