「バイクと少年」/ベンジャミン
 
ね・・・)

それから15年、今僕は小さなバイクにまたがっている。
4スト・単発・85ccの改造車は、この間まで眠っていた。長い時間をかけてボロボロになっていった僕のように。
でも今は、ちゃんと動くんだ。無理のきかないエンジンは、まるで僕とそっくりだけど、少しの風であおられるのも、やっぱり僕みたいだけど、僕をその背中に乗せて運んでくれる。流れる世界なんて無理だけど、今の僕には調度いい。ゆっくり景色をながめながら、のんびりと行こうじゃないか。

(お前は僕をおいていかないよね・・・)

あの頃の少年はもういない。けれど自由な僕はまだここにいる。ストリートエンジェルは僕のことだと叫んだら、聞こえてしまいそうで恥ずかしいから言わないよ。
お前は「ボボッ ボボッ」としか言わないけど、また動けるようになって嬉しいのは、全身で感じられるんだ。

さぁ 行こうか! 毎日天気だったら最高なのにね。

あぁ わかってるよ。
「ゆっくり行こう」って言いたいんだろ?

(完)
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