わたしは海面に立てないでいる/うめぜき
 
ただ8時30分を指している

ふと気がつくと
ぼんやりと海面を見つめていた
穏やかな海面に胸を撫で下ろし
そのさざめきが胸を捉えてくる
あなたの姿は何処にも無く
私はそのことに少しの落胆を隠せない
少しの落胆を隠せないのはあるけれど
大きな安堵を覚えて、立ち上がる

灰色の風が頬を撫ぜる
防波堤の上をバランスを取りながら歩いていると
歌を口ずさんだ
歌は何処までも突き抜けて
何処までも沈んでいく
その厚い雲の向こう
きっと晴れやかな空が広がり
歌は何処までも響いていく
時計は8時31分を指していて
私はあなたに
会いたくて仕方がない






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