わたしは海面に立てないでいる/うめぜき
 


時計は8時30分を指している
海面に凛と立つあなたを
私は海辺から涙をこぼしている
風は灰色だ
漣(さざなみ)を立たせたり
あなたの眼を見開かせたり
していて
宇宙は落ちてきそうなほど近く
雲は逞しく
あなたを讃えている
時々誇らしく
時々苦しく
時計は8時30分を指している

時計は8時30分を指している
散歩の要領で
海面と海辺の境目に足を踏み入れる
風は灰色で
涙がとめどない
足は震え
あなたを直視できずに
その立ち姿に抱かれたいとだけ
こころに寄せては
返していて
海が触れる
触れた海が蝕む
風があなたを伝える
あまりに苦しく
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