棲魚/アラガイs
 

納屋は鉢植えの葉っぱが判別もできないほど、伸び放題の雑草に囲まれていた
やわらかな西日が微かに反射するプリズム
曇った硝子の汚れを異物に浮かび上がらせて、枯れた観葉植物の茎根が足元に絡み付く

硝子とは思えないほどの水槽が棚の上に、外からは見えなくなるほど苔むす蓋でいくつか被せられてある
埃だらけの木戸を開く
底を覆う暗い室内が、ぼんやりと透けてみえた
果たして水換えどころか、餌すらやってはいない
何週間ぶりかもしれない
いや、ひょっとしたら何ヵ月ぶりかもしれない
増え過ぎた自室の水槽に手をとられ、ここの所在すら忘れていた
ふと、思い出したのもまったくの偶然からだっ
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