西日差すこの途に、絶えず漂う感傷よ(散文詩)/faik
電線がそよぎ、枯木[こぼく]が揺らぐ。
片田舎の旧道に、どこからか舞い込んできた桜の花は、
はらほろと。誇張もなく、執念もなく、かといって無残でも無常でもなく。
昼下がりの淡い亜麻色の中、ただ静かに転がって行くのでした。
嗚呼、この季節はとかく哀しい。
なにがどうというわけではなく、漠然とした切なさに満ちているのです。
暖かな木洩れ日は溺れるに浅く、吹き抜ける北風は未だ冷たく、されど優しく。
温[ぬく]まった土の香や新芽の青も、まだまだか細く、頼りなく。
それでも確かに、生に満ち。信念にも似た息吹に、満ち。
呼吸の度に、私の心は絶えず躍り。
けれどもふとした瞬間に、ひとたび辺りを見渡せば、
あまりに手応えのないその光景に、何かを見失ってしまうのです。
漠然とした切なさに、捉えどころのない優しさに。
嗚呼、私の目の前に続くこの道の、なんと静かで敢え無いこと。
なんと穏やかで、拙いこと。
夏と冬とを繋ぐこの、春という途[みち]の儚きことかと。
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