ヘラブナ/小川 葉
 


わたしは
ヘラブナである

めのまえにおちてきた
はりがついたえさをくわえ
つりあげられては
リリースされる

ヘラブナとは
そのような
いきものである

そんなこともしらない
わたしは
ヘラブナである

ヘラブナつりせんようの
うきもあるという

ほそくて
いろあざやかな
めもりのついた
くじゃくのはねで
できている

くじゃくという
とりのなもしらないで

みずのなかから
きょうもまた
つりあげられる
ヘラブナである

やんなっちゃうなあ
なんて
おもわずに
ほんのうのまま

つまがしゅっさんを
ひかえて
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