クロエはかなしい歌を書く/
瀬崎 虎彦
雨が上がっている
道はまだ濡れている
鉄に触れる指先に
湿度が這い上がる
公園は無人で
空は切り取られている
木々の隙間に鳥が
忘れられたように飛ぶ
クロエはかなしい歌を書く
自分より秀でている人を見て
クロエは下を向いて歩く
クロエは立ち止まることを知らない
ヨーロッパ風の尖った屋根の
懐かしいあの場所に目を閉じて帰る
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