シェエラザード/吉岡ペペロ
 
シェエラザードを弾くおんなの

やわらかくて熱いお腹に

顔を押しあててしがみついていた

海とシンドバッドの船、

そのバイオリンの独奏だった

大学二年の頃だった

かたちにならない

なにかをなぞるような愛だった

ただあのときだけ

硬くて切実なかたちが

ふたりに現れたのだった

出会いを哀しみ

その哀しみの理由を懐かしみ

シェエラザードを弾くおんなの

やわらかくて熱いお腹に

顔を押しあててしがみついていた

海とシンドバッドの船、

そのバイオリンの独奏だった







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