てんらく/茶殻
ただ雲を見にテーマパークまで足を運んだだけだと気付いた
その日
帰りの空は淀んでいた
僕はどれいか
どれいなのかい
茹で卵に入った蜘蛛の巣のような亀裂の
奥に埋まる
命に似たもの
___
真っ暗な空港で
抱き合う天使と悪魔の
ワルツ
火葬場から新しい煙が立ち昇る
滑走路は際限なく継ぎ足されて
甘い祈りが舞い上がる
ろくなことにはならないだろうけれど
僕は昨日を生きたかった
カクカクとペダルを後ろ向きに回して陸橋を下る学習塾の帰路
神にすら思い通りにならないことも
あるんじゃないかと思った
財布に残っていたレシートの裏に
赤いサインペンで『大吉』と書いて
破いてみる
天使に右腕を
悪魔に左腕を
産まれる前に譲った気がする
因果によって生えた新しい腕で
甥とキャッチボールをした
洋酒を覚えた
六弦を覚えた
ロレックスを覚えた
愛する有象無象をつねってはじいて撫で回して
全部そいつらのせいにすることを覚えた
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