鉄の花/木立 悟
は一途に連れてゆく
時間と水を埋めてゆく
夕陽が砂に 崩れ消え去り
他は他の砂に ただ在りつづけ
いつ終わるのか知ろうともせず
生まれ出る葉に微笑んでいる
曲がり角をゆく 曲がらずに
まっすぐをゆく 見えなくなる
ほんとうは曲がり 遠まわり
見知らぬ道の 迷いの円周
終わっては去り終わっては消え
小指は花のかたちを巡り
水色は仕掛け
水色は箱
触れようとする子を追いかける
さかさまの遠吠えに
音の鱗にかがやく空洞
冬の工具
ひとつ目のまま朝になる曇
残るつまびき
ちらばりちらばり
午後の海に緋色を返し
路面電車を火口に運ぶ
誰もいないことだけを記録し
心ある曇は街を離れた
手のひらと円と
傾いた壁
燃えるのはただ
冬の静けさ
鉄の花が水に落ち
さらに広く空うつすとき
午後は昼の名をひとつ
忘れられた街へ置いてゆく
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