たましいだまし/そらの とこ
大きな街の
大きな駅の
大きなロータリーで
人 独り独りのたましいが
何事もなかったかのようにのたれ死んでいる
昨日まで
そこには花が咲いていて
春でもないのに咲いていて
うかれて躍る 人々が
黄色い声と一緒に
人が人を嫌う 声がして
それはそれは
祭りのようだった
たましいはゼリー状で
グミのような硬さがあり
とても柔らかい
彼なのか 彼女なのか 分からないけれど
そっと手で掬って食べてみた
心をつんざく様な味だ
ふわぁっと体が浮く
だけど地に足はついていて
私はいつものように
仕事場のデスクのパソコンの前に座っていた
パソコンを見つめ
顔色をうかがい
だまし
だまし
何もない
と
だましながら
何事もないフリをして
生きる
あのロータリーに
たましいを置いたまま
戻る 編 削 Point(5)