シェイクスピアの遥かな偉大さについて/yamadahifumi
行動に走り没落するような人間の絶望ーーーいや、その真理というものをはっきり抜き出して呈示してみせた。(もちろんそれだけではないが。)そしてこうした人間にまつわる真理、その運命、宿命というのはシェイクスピアにとって余りにも当たり前のものであり、彼にはこの世界がもはや二重に見えていのだ。彼は現実世界の上にもう一つ、魂の層を重ねた「シェイクスピア的世界」とでも言うべきものが見えていた。彼はそれをたまたま紙に書き写して、私達に見せた。私達が紙の上に書かれた文字を通して見る世界は、彼ーーーシェイクスピアが見た、この世でありながら、全く別物のもう一つの世界である。
ここにおいて、少しはシェイクスピアの魅力に触れることができたように思われる。だがシェイクスピアを直に読む人は、僕の言葉が何一つ語っていないことを知るだろう。
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