ザーメン天国/竜門勇気
三つ約束事だけ誓わされて
家を出た十五の
夜の静けさだけが脳裏でチカつく
美しい世界は
躊躇いなく敵にまわった
充分であって
不足はないとされた持参金は
繁華街を往復する間に消えてなくなる
神聖かまってちゃんと相対性理論を聞いてる間に
人生が終わってるのに気づいた
隣の奴のキータイプのおとが
鳴り止むのを待っていた
どんなに酷い味がしても
一度でいいから
唐揚げが食べたかったんだ
近所の農家から
盗んだ玉葱がひと粒
部屋の中で無意味な
価値をまき散らして死んでる
お前らは気づかないんだね
盗まれなかった玉葱がひと粒
ここで腐ってる
酒を飲んで
ごまかしてるのに
酒を飲んで
人間らしくなれるように
ごまかしてるのに
無意味が辛ければ
意味に慣れるんだって
脅迫状がずっと届く
淋しいんだ
気持ちだけは
誰でもいいんだ
本能に期待はしてない
ザーメンを
受け入れてくれれば
そこは僕の天国
とりあえず僕の天国
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