Mへの 手紙/るるりら
 
空が俄かに かき曇り
夥しい白波の下で
大口を開けている 黒い うねりに
咀嚼されていた 北への道程で
私が見たものは
岩礁というより 貴女でした

幼い日 貴女の名を 保護者欄に書くとき
あの頃の私は 貴女は保護される人ではないかと
いぶかしく感じていました
ランドセルが板についてきた或る日
躓いた先に 田んぼが あったから
私は 泥に足をとられたのでありません

貴女は 光が わずかな人だったので
盲人の耳の世界を歩んでみようとした
瞑った心で
ぬかるんだのです 

こちらでは桜が咲きました
術の結果を待たずに 帰郷して
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