溺れ/opus
 
例えば、
僕が溺れていて、
君が助けてくれる。
僕は
ひたすらに感謝して
君はいいよ、
大丈夫だという。

でも、
君が溺れている手をとって、
助け出そうとしたら、
よして、危ないから
という。
僕は、
それでもその手をとって、
君を引き上げる。

ゴメンね。
ありがとう。
ありがとう。

僕の髪はボサボサで、
握力はとても弱く、
靴は泥で汚れている。

分様に泣いて、
君にしがみつく。

ありがとう、
と君はやはり、そう言う。

そう言う。

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