はるについて(ホットケーキ)/木屋 亞万
 
常温でさえもほんのりあたたかかい春について考えている


夜は朝に 雪は花に芽になって 冬は春になった彼岸に


「左様なら」知的なゆきんこ梅になり陽気なゆきんこさくらになった


水分を蓄えぷっくり張り出した蕾が春に漲っていく


やさしさで触れても傷がついていた春について考えている


ゆきんこに「苺がうんだ子は何になるのか」答えられないままの


さよならも言えず会話も尻切れで雪は突然とけていくから


川のようにとらえどころのない流れその全体が私なのです


肌寒いテラスでケーキ食べている常温ですらホットケーキさ


コーヒーの香りを思い出しながら通らぬ鼻でコーヒーを飲む


おやすみのはるいちばんがいない間に春の嵐はやりたい放題


さよならの花散らないでいておくれ春の終わりよD.C. Largo


憂うつな人の抱える優しさに憧れているゆうきがほしい


さまよえば春についてさ君もまた春へとたどりついているかな


春についてケーキを食べて眠くなるあなたの肩が隣にほしい

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