越冬ツバメ/天野茂典
 
 などのみではあるが
  いまは京王線の終着駅で
  街は急激に
  さまがわりしている
  辺鄙な田舎町から
  現代的な街へ育っている
  もう山も畑もない
  いくつも高層マンションが立つ
  街なのだ
  ぼくの家は里山
  をならした後の
  住宅街にあるが
  いままで街の中に住んでいたので
  ひじょうに
  ネオンが恋しくなるのだ
  帰ること
  帰郷すること
  ぼくはどこへ帰ったらいい
  ぼくはどこへ土産を持って行ったらいい
  インフルエンザの予防接種のように
  ちくんといたい
  越冬するツバメのように
  ぼくは行き場を失っている
  帰ること
  すなわち
  死なのだ
  それまで人は帰れないのだ
  誰でもみんな
  知ってることではあるが
  帰ることころがないならば
  越冬ツバメよ
  飛び続けることしかないだろう


        2004・12・04
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