こだま かさなり/木立 悟
 



雪の失い冬から
あふれ出る道
水の指の軌跡に
遠去かる道


午後を照らす灯
ぬるく星となり
ひとつとふたつの視線のはざまを
音と光を行き来する速さで


冬と枝が
時計を廻す
傷と歪みの
時計を廻す


砂の氷を
踏みしめる夜
誰もいないものにとって
脚は
ただ脚だけではない


ここでは描けないことが多すぎる
では何時 描くことができるのか
指が消えたあとにはじめて
描ける指が生まれ出る


片目に刺さったままの冬
どこまでもうすくなりながら
こがねを捨てられぬこがねとなり
けだものの涙を咆哮(こえ)に染め
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