世界/薬堂氷太
世界は 誰かの輪郭なんだと 僕は思う
僕の世界は 僕の
見た
聞いた
触れた
限りの世界で
それは世界のほんの一部でしかないけれど
僕にとっては それが世界の全てで
言いかえると 世界は僕の輪郭の形をしている
君の世界は 君の
見た
聞いた
触れた
限りの世界で
それは世界のほんの一部でしかないけれど
君にとっては それが世界の全てで
言いかえると 世界は君の輪郭の形をしている
僕の尖った輪郭と 君のやわらかい輪郭が重なると
世界は少しだけなめらかになる
いつか
少し広がった僕の世界から
君がいなくなるとき
世界は元通り狭くなるけれど
輪郭はなめらかなままだ
なぜなら 君を忘れないから
そうして僕たち以外にも
様々な形の輪郭が集束して
世界は出来ているから
この世界は
丸い形をしているのかも しれない
だから
どこの誰だか知らない
まんまるく広い輪郭の世界の中で
生きている僕は
いつも息苦しくって
たまらないんだ
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