降り来る言葉 LIX/木立 悟
 





岩陰に隠れた巨きな手
陽に染まり さらに隠れゆく
灰緑のなかの金のうた
岩めぐる径をすぎてゆく


もとのかたち
もとのかたち
ひとりの子が抱く
壊れたかたち


花が花を撫でながら
花になる前のかたちとなり
うたの糸のあやとりは
樹から樹へとわたされてゆく


蛇と火の文字
常に真昼にはじまる出来事
月の半分 星の半分
夜へ夜へ 流れ込むつまびき


橋を離れ
声の上を過ぎ
抱きあう原に沿い
涙の足もとに
心を置いて来る


朝の子らがふりかえり
水に溶けるふたつの灯を見る
水の底の夜の時計
濁りの柱を空への
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