星になる君とさいごの夜にいる舌の氷の溶けおわるまで/木屋 亞万
 
けるほど
やわらかくはできていない

安い油の匂いがするファーストフード店
炭酸水の入っていたコップ
その底に残る砕かれた氷
それを幾つか頬張って
君の口の中に移した
氷が溶けてなくなるまで
そのつめたさが私を安心させるまで

君の乗ったロケットは
毎日朝の来る星を離れ
ずっと夜のままの世界へ旅立つ

君の乗っている機体の吐き出す炎が
いつかのブレーキランプのように
いつかの夜間飛行のアウターランプ(点滅灯)のように
私に居場所を教えてくれる

舌の真ん中にずんと残ったままの氷のつめたさと
最後に頬に触れた君の手の感触

もっと私のために生きてくれても良かったんじゃない
そう問いかけたいけれど君は今のままのほうが正しい

君は星になる
星になって飛んでいく

なあ 
帰ってこいよ 私が生きているうちに

君のいない朝が来て
君はずっと
夜の闇を飛んでいく
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