傷/カンチェルスキス
 



 少しだけのしあわせなら正解です
 屋上の端っこで見上げる夜空の月は
 名もなき白い花の花弁がめくれるほど
 唐突にこわいのです
 こわさの延長線上にすでに伏せ字になって
 しまったせいめいがあるとして
 行き着く先が目覚めない星々の眠りだと
 繰り返される無言電話のように聞きました
 よごれた踵の下にいつものように
 隙をついて奪ったけつえきの切れ端
 なんでもないような顔をして
 耐えていく  
 傷






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