魚とバナナとラクダの話/こうだたけみ
魚のキーホルダぶら提げて、この通りを下ってくると、彼が追いついて耳の上にキスをくれる。黄緑色のリュックサックの下に手を突っ込んで、わたしの腰を抱えながら彼は歩くのが好きで、彼の彼女になるんなら、ハイヒールなど捨てっちまいなさい。
お豆腐みたいな携帯電話に頬ぺたをくっつけていると、横目で見たバナナの茶色い斑点がキリンに見えなくもない。
わたしはいつも首を傾げているので、この前独逸語の先生に首がおかしいのかと聞かれた。その独逸語の先生はもう一人の独逸語の先生とうりふたつで、独逸語の先生になるには資格がいるなと思った。
黄緑色の、象の貯金箱の鼻が上を向いている日は、珍しく店長に二回も褒
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)