青空に登る灰煙/白昼夢
あの子は行ってしまった。
遠い遠い、遥か向こう側の世界に。
たった一言が言えなかった。
あの子は行ってしまった。
暗い暗い、丸い壺の中に。
もう手は届かない。
あの子は行ってしまった。
木版に書かれた戒名と、悲しみを振りまいて。
記憶の中だけの存在に。
悲しみに暮れ、怠惰な日々を過ごしていたのが
どれだけ長い年月に思えたことか
それでも振り返ってみると、たったの一年も経っていない現実が
ただ無造作に、背後に転がっているだけで
そこには何の色も無く、何の意味も意義も無く
酷く暴力的に時間だけが過ぎて行ってしまった
歩いてきた道にあの子はもういない
歩い
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