愚者の庭/木立 悟
細くやわらかな毛氈が
鳥の道に触れてゆく
夜の上の朝
光にじむ日
猫の幻が五つ
壁の幻を視ている
街が眠るまで
会話はつづく
冬が招く冬の道を
影に刺されて歩く影
線が破れ 蒼が生まれ
白と黒の行方を照らす
忘れられた橋
樹の息継ぎの冬
地の吹雪を
のぞきこむ午後
こだまをこだまに踏みしめて
浪音の絶えないまわり道
浜より低い林を巡り
暮れを連れて歩きゆく
生まれそうな指を指で押さえ
硝子の地面の陽をたどり
割れた足跡を振り返り
花に傷つく曇の帯を見る
雨は速くなってゆく
屋根の氷は倒
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