描写2012/ゆるこ
心と会話すると浮かび上がる物事は
それはそれは小さな声で疼いている
回顧する、メリーゴーランドに乗りながら
指先を伸ばしては触れようとする
けれど
どうしても、すり抜けてしまう
*
私が会話を始めた時
既に空は東雲色に成っていた
浮かぶ雲から降り注ぐ唐草の香りだけが
どうしてか、現実味を帯びていた
指先を着ける、湿ったグラウンドの土
その黒さに私は疼く
これは昔、楽器だった
私は確かに鳴らしていたのだ
瞳を二、三度翻(こぼ)せば
風の舞の中に過去を見る
これはブラックホールだ
私は身体を翻(ひるがえ)す
夕闇が、迫っている
校庭を全て囲んでゆく
浸食、かもしれない
誰かの叫ぶ声が優しい
*
絡めた睫毛を解くと、薄暗い六畳の部屋に漂う気配
湿った風が顔の横を通れば
据えた薫りが境界線を潤す
これはどこまでが私なのだろうか
喃語を咀嚼する空は、既に東雲色だ
メリーゴーランドは走る
私の知らない方向へと
飛ぼうとしている
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