1983/梅昆布茶
空は突き抜ける様に青かったし俺のバイクは相変わらず
走り出すまではやけに重かった
時々はビニールレザーのシートの上に安っぽい天使が
休んで煙草をふかしていたりするのだけれど
それでも自由を愛を平和をのんきに夢見ていた
彼女は愛らしくてでもめっぼう気も強かった
もちろんたまにはわがままも言ったけれど
ボディブローのように後から効いて来る女だった
桜の並木道は空を薄紅に染めて俺たちもそんな夕暮れにしばし
足を停めて二人桜色に染まる小指繋ぎながら
幾つもの別れの言葉噛み殺しながら
そんな横顔焼き付けるように
ためらいながら望みながら心彷徨わせたまま
言葉の替わりに音
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