砂紋/望月 ゆき
 
たったひとつも
あなたを連想させるもの

のこさないまま
あなたは
去っていった


流砂にかざす
わたしの左手
の皮膚に
規則正しい、起伏
風、止んでなお
砂は散り
水面は流れる


目を細めても

境界線を消しても
その先へは行けない
手がかりさえ
干潟の砂紋


たしかなこと

あるとしたなら
あなたはいつも 正しかった
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