空のみなしご/まーつん
えている
ああ、その記憶は 振り払っても離れようとしないオナモミのように
少年の脳裏にこびりついている
激情に駆られて
カウンターにたたきつけられた
黄金色の安酒が揺れる ジョッキの底
険しい皺の刻まれた 眉間に立ち上る青筋
神がどうしたとか
長く続いた抑圧だとか
公平さについてだとか
富の分配だとか
血筋と誇りだとか
主張の波は
大海でぶつかり合う
二つの潮となり
その波しぶきが
波を立てるすべての
人々の顔に降りかかった
姿なき悪魔が 集まってきて
崩れ落ちた瓦礫に 焼け焦げた鉄骨に
ボンネットの吹き飛んだ 車の残骸に腰かけて
煮えたぎ
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