サルビアと春雷/マーブル
 

夢から覚めた男は 朝靄のような意識のなか
必死に 振り子時計の針の位置を探っている
苦々しいコーヒーに浸かって死んじまってもいいかもしれないとまた目をつむる
ああ 春雷は鳴りやまない


踊りだした光りのもとへ駆けてゆくサルビアの女は靴擦れの足を朱くさせて

ああ
ああ
ああ


春雷は鳴りやまない 鳴りやまない 鳴りやまない


空をみあげた

あらゆるかたちの雲が


あなたの細胞ならば


無垢に


触れると思ったのだ


サルビア
サルビア
サルビア


愛の悲しみにと胸を裂かれたあなたの海原で眠りたい


つぶらな目をして

雨に微笑む

漂う鉄の匂いは

届かない


目を伏せて


また


歩き出す


うしろすがた


サルビアの女の靴音


地平線へ消えた誰かの思い


春雷 鳴りやまぬ日


サルビア
サルビア
サルビア




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